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■第8章・・・・・神社建築

神社建築の様式

神社の殿舎のなかでいちばん重要なものは、本殿であり、本殿は、祭神を奉斎する建物、御神体奉安の場ですが、その本殿の様式に古来いくつかの様式があり、それぞれの神社で、その様式が厳重に守られてきました。
日本の建物は、出入口の位置によって、妻入りと平入りとに分けることができます。屋根の破風の見える面、すなわち屋根の側面(妻)を正面としたのが妻入りです。これに対して、妻と直角の面、すなわち切妻造りの大棟に平行な側を平といい、平に入口があるのが平入りの建物です。神社本殿も、古い系統のものはいずれかに属する建物様式をとっています。妻入りは、大社造にはじまり、最古の神社本殿も、古い系統のものはいずれかに属する建物様式をとっています。妻入りは、大社造にはじまり、最古の神社建築と言われ、そのほか大鳥造・住吉造・春日造などがあります。また平入りには、神明造・流造・八幡造・日吉造等があり、さらに複雑なものや特殊な様式の本殿には吉備津造・祇園造・浅間造・権現造(八棟造)等々多数の様式が見られます。

大社造

出雲大社本殿に代表されるもので、類列は出雲地方に多く見られます。切妻造・妻入りの建物で、妻の中央に「うず柱」という太い柱があり、入口は中央より向かって右の柱間にとってあります。本殿中央には心の柱があります。最古の現存例は松江市の神魂神社本殿です。

大鳥造

大阪府堺市の大島神社本殿に代表されるもの。大社造より発展したもので、切妻造・妻入り、入口は正面中央で、内部は心の柱がありません。

住吉造

大阪市の住吉大社本殿に代表される様式。切妻造・妻入り。大島造が方二間で正方形なのに対して、住吉造は長方形で奥行が倍になり、内陣・外陣の二間に区画されています。

春日造

奈良市の春日大社本殿の様式。切妻造・妻入りですが、入口に向拝(廂)をつけ、彩色がほどこされています。

神明造

切妻造・平入り。伊勢神宮(内宮・外宮)は他の神明造とは異なり独自の様式を有し、他の神社には使用できないので、唯一神明造と称します。伊勢神宮の唯一神明造を根元とする神明造は、神社建築の一流派を形成しています。わが国最古の神明造は長野県大町市の仁科神明宮です。

流造

切妻造・平入り。神明造から発展したもので、本殿の様式としては全国にいちばん広く分布しているものです。照屋根が特色で、前流れの屋根が曲線形にのびて向拝となっています。流造の最古のものは、京都府宇治市の宇治上神社本殿で、代表例としては、京都の賀茂別雷神社(上賀茂)・賀茂御祖神社(下鴨)があげられます。

八幡造

切妻造・平入りの建物が二棟前後に接続した様式。前殿と後殿の中間に一間の相の間がつきます。大分県の宇佐神宮・京都府の岩清水八幡宮が代表的なものです。

日吉造

聖帝造とも称し、大津市坂本の日吉神社本殿に見られる様式。母屋は切妻造・平入りが原型で、正面から見ると入母屋造りに見えますが、背面には廂がないので、入母屋造の軒を途中から切りおとした形になっています。

祇園造

京都市の八坂神社本殿の様式。母屋の正面には向拝があり、左右と後方に孫廂をつけた形になっています。

権現造

京都市の北野天満宮、栃木県の日光東照宮などが代表例です。仏寺の開山堂が起源とされていますが、そのもとは八幡造にあるといわれています。本殿と拝殿の間に「石の間」があり、この三つが平面も高さも異なるため屋根が複雑になっています。屋根の軒数が多いところから八棟造ともよばれています。

鳥居

神社境内の建造物でいちばん目につくのが鳥居です。神社と言えばまず鳥居を連想する人も多いでしょう。その「トリヰ」という語について、その語源的な意味は現在明確ではありません。
原初的には、ある一定地域を垣で囲い、入口として日本の柱を掘立てにし、上部を横に一本の柱で結んだものが洗練されて鳥居へと発展したのではないかと考えられます。要するに神さまの住居である神域を示す一種の門が鳥居であると言えます。
鳥居の基本的な形式は、日本の柱(左右の柱)と、その上部を横に結ぶ一本の柱(貫と称する)、そしてさらにその上部にのせられた一本の柱(笠木)とからなっています。鳥居の部分名称は図のとおりです。この鳥居も時代とともに、また地域によって、その形が少しずつ変化しています。形の変化とともに用材も変わってきました。古くは木製の鳥居、それも素木のみであったでしょうが、やがて朱塗りのものが生じ、さらに石鳥居、銅鳥居、陶製鳥居、鉄筋コンクリート鳥居の出現を見、現在ではアルミニウム製の鳥居も造られています。
鳥居の形式を大別すると、笠木・島木が一直線になっているものと、笠木・島木の両端が上向きに反って曲線をえがいているものとに分けることができます。前者の代表例は神明鳥居で、後者の代表例が明神鳥居です。なお、鳥居の特殊な部分名称をとりあげて、島木を有する島木鳥居、柱上に台輪がついている台輪鳥居、柱の根もとに藁座がある藁座鳥居などという呼び名もあります。
以下、代表的な形式を紹介しておきます。

神明鳥居

伊勢神宮内宮の鳥居が典型。円柱二本の上部に円柱型の笠木をのせ、貫は柱内にとどまり、柱に転び(柱の傾斜)がありません。
伊勢鳥居・・・伊勢神明鳥居ともいいます。笠木・貫・柱よりなり、笠木は上部に鎬のある、つまり断面五角形で、両端が襷墨に(下方に向かって斜め内側に)截ってあります。貫は断面長方形で柱を貫通しない。なお、その取付に楔が打ち込まれています。柱は円柱で、転び(傾斜)はありません。
鹿島鳥居・・・茨城県鹿島神宮の鳥居の形式。貫が柱をつきぬけ外側に出ています。笠木の両端は垂直。転びはありません。
黒木鳥居・・・皮つき丸太をそのまま使ったもの。京都市嵯峨野の野宮神社の鳥居が代表例。鳥居の形式の最も初期のものといわれています。転びはありません。

明神鳥居

円柱の上に反りのある角型の笠木(その下部に島木)をのせ、角型の貫を通してあります。貫は柱を貫いて外に出ています。島木と貫の中央に額束をつけます。最も一般的な鳥居といえます。京都市八坂神社の鳥居が代表例。
両部鳥居・・・原型は明神鳥居で、柱の前後に各々二脚の控柱(稚児柱という)があるのが特徴です。権現鳥居・四脚鳥居ともいいます。広島県厳島神社、福井県気比神宮の鳥居が代表例。
稲荷鳥居・・・明神鳥居が原型で、柱頭に台輪がのっているものです。台輪鳥居ともいいます。

変形鳥居

神明鳥居または明神鳥居を原型としていますが、部分的に特殊な様式に変化した鳥居です。
春日鳥居・・・鹿島鳥居に似ていますが、柱に転びあがり、額束がついています。奈良県春日大社の鳥居の形式。
八幡鳥居・・・春日鳥居とほぼ同形ですが、笠木・島木の先端(鼻)がななめに切られています。
山王鳥居・・・日吉鳥居・合掌鳥居ともいいます。明神鳥居の上に破風形の合掌造を加えたもの。柱
脚に藁座をつけます。滋賀県大津市坂本の日吉大社の鳥居の形式。
三輪鳥居・・・上部の笠木・島木・貫は明神鳥居型、柱は垂直で神明鳥居型。左右に脇鳥居があり、鳥居中央には出入りのための板唐戸を設けてあります。奈良県の大神神社の鳥居の形式。
鳥居はその名称が示すように、特定の神社について発達し、その神社の建築様式や祭神と密接に結びついている場合が多くあります。従って、神社に鳥居を建てるような場合、鳥居の美しさに心をひかれて、祭神の事や、建物との調和を考えないと、見苦しい不調和を生じたり、神明に対しても恐れ多いことになります。
また、鳥居は構造が簡単であるために、長さや太さの均衡を失っては、この美しさがないばかりでなく、違和感さえ沸かして、崇敬者の心をみだす事があるので、鳥居の設計にあたっては、注意しなければなりません。

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